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Category: 貧乏市長物語

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TRINSIC OF THE DEAD ~Diary of Arthur~ 3



7月15日

明け方から夜まで、ずっとじめついた雨が降っている。
初夏の蒸し暑さと相まって、湿気が体に絡みついてくるような嫌な天気だ。
例の奇病に感染し、牢獄内の個室に隔離されていた二人の衛兵───ターナーとエリック───は、ここ数日ずっと扉に体当たりし続けていた。
彼らの腐った肉体が壊れるより先に、扉の金具の方が音を上げてしまったのだ。
こうして解き放たれた彼らは、手近にいた衛兵たちに次々と襲いかかっていった。
牢獄内での被害が最小限に留まったのは、ガードキャプテンであるレディ・オータムの機転あってこそだろう。
彼女は二人に立ち向かうより先に、他の無傷の衛兵たちを集めて武器庫に立て籠もった。
そして目標を見失った彼らが外へうろつき出ししていく隙にフルプレートで身を固め、再び彼らを捕縛しに走ったというわけだ。
貴重な衛兵の数を減らさずに済んだ判断は、称賛に値する。
───だが、
衛兵4名、通行人2名、トラベラーズ・インの従業員及び宿泊客6名。
ほんの1時間にも満たない間に、これだけの人間が感染した。
時刻が深夜に近かったことがせめてもの幸いだ。
これがもし人通りの多い昼間だったとしたら───それこそトリンシックの街は、阿鼻叫喚のパニックとなっていただろう。
そして今回の事件で明確になったことが一つある。
感染から発症までの時間は、感染経路を経るごとに早まっていく。
今回の被害者たちは、接触からほんの数分で体が腐敗を始め、理性を失っていった。
もはや手段や倫理に拘っている場合ではない。
これは死に至る病───それも、都市そのものが死に絶える病だ。
例え地獄に落ちるとしても、私はこの決断をするしかなかった。
すべての始末が済んだ後、騎士団の一隊に隠谷の魔術師たちを捕らえるよう命じて送り出した。
奴らには、必ずこの代償を支払わせねばならない。


まだ、城壁の外で赤々と燃える炎が見える。


7月16日
昨夜に続き、今日も一日中雨だった。
重たげな灰色の空を見ていると、気持ちまで沈んでくる。
トラベラーズ・インは戒厳令を敷いた上で、伝染病患者が出たとして一時的に施設の封鎖を行った。
レイの指揮の下、細心の注意を払って除染作業を進めているが、完了するにはだいぶ時間が掛かるだろう。
昨夜火葬を行った者達の家族に、事の次第を説明しに行った。
誰も恨み言を言わなかったのが逆につらい。
残された彼らには、末永く手厚い援助を行っていかなければ……。


7月17日
また今日も雨だ。
送り出した騎士団が、手ぶらのまま引き返してきた。
隠谷はすでにもぬけの空だった。
アルバートの侵入に気付いたのか、あるいはもう"実験"の結果に満足したのか……。
資料の類もまったく残っておらず、今となってはアルバートの持ち帰ったものが手がかりのすべてだ。
だがその研究書も液体も、解析は遅々として進んでいない。
やはり魔術施設の満足に揃っていないトリンシックでは、できることに限界がある。
施設も人材も充実したライキュームに支援を求める書簡を出し、王室補佐官にも現状を報告する早馬を送った。
まだ未知の部分だらけだが、万が一この奇病が他の街で発生するようなことがあればブリタニアは大混乱に陥ってしまう。
市街では長雨で病気が流行し始めたという噂が立っている。
きっと噂や病のように、不安もまた人々の間を伝染していくものなのだ。


7月18日
終わっていなかった。
まだ何も終わってなどいなかった!
北区の住宅街で、複数の世帯の感染が確認された。
感染源はどこだ?まだ取りこぼした何かがあったのか?
どちらにせよ、この区画は丸ごと封鎖するしかない。
原因も特定できないまま、ただ感染者を焼いていくのは無為の極みだ……。
皮肉だが噂は現実に追いついていたのだ。
騎士団からも流行病の対策を立てるべきだという声があがっている。
詳細は伏せるにしても、これ以上の感染拡大だけは防がねば……。
降り続く雨が忌々しい。


7月19日
流行病の対策という名目で、トリンシック中の識者を招聘した。
最初私の話を冗談と受け取っていた彼らも、感染者の姿を見てすぐに考えを改めたようだ。
まずすべきは感染源の特定、そして感染拡大の阻止。
市民ホールに対策本部を設置し、ここから各区画へ指示を飛ばす体制を整えた。
肝心の治療法については、ありがたいことに想像よりずっと早くライキュームからの返事が来た。
彼らはこの奇病に多大な関心を示しており、すぐにでも資料とアンプル、そして"現物を数体"寄越して欲しいとのことだ。
治療への希望が見えたのは嬉しいが、あれを───彼らを───外に出すには不安を感じる。
何か上手い手段を講じなくてはならない。
ちなみに街で夏風邪が流行っているというのは、どうやら本当らしい。
この件にあわせ、そちらの治療も進めていくことになった。


7月20日
地獄。
地獄だ───天の悪意すら感じる。
感染源がわかった。
この奇病が広がっていく原因は、あの腐った細胞組織にある。
肉片そのものでなくてもいい。
その腐敗した体液が溶けた水に触れるだけで充分なのだ───
対策本部に詰めながら、私は子供たちが公園の池で遊ぶのを見ていた。
そう、見ていたのだ。
ようやく晴れた、夏の青空の下で。
子供たちが、その笑顔を消す間もなく次々と発症していくのを。
すぐ側で私は見ていた。
おそらく5日前の事件で流された血が、長雨に洗われてあの溜池に流れ込んでいたに違いない。
……あの忌々しい雨……!
 これは接触感染にばかり気を取られ、他の経路を無意識に除外していた我々のミスだ。
公園でくつろいでいた多くの市民は、瞬く間に阿鼻叫喚となった。
感染者たちの膂力は想像以上に凄まじい。
なにせ手足がもげようが骨が折れようが一向に気にかけないのだ。
それが猟犬のように追い縋ってくるのだから、この恐怖はとても言葉にできない。
あの時アルバートに庇われなければ、今死にかけていたのは私だっただろう。
いや、その前に彼らの仲間入りをしていたか……。
私がこうして筆を取っていられるのもアルバートのお陰だ。
その引き換えに彼は片目と片腕を失った。
レイとブルーノが必死で治療しているが───はっきり言って、長くはないと伝えられた。
しかし、それまでの時は少しでも引き伸ばしてもらわなければ。
アルバートは確かに感染者と接触した。
私の代わりに、よってたかって食いちぎられたのだから。
だが彼はまだ発症していない。
発症していないのだ!
原因と思しきものは一つしかない。
あの小瓶の中身。
アルバートが本当にあの液体を摂取していたのなら、我々にはまだ希望がある。 
 
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